メールマガジンvol.23

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私は昔、デンタル・テクニシャン(歯科技工士)という職人であった。

歯には機能的要素と審美的要素の両方が必要だ。
噛む力に耐え、腐食せず、他人から見て自然に見えなければならない。

歯科技工士の学校では様々な知識やテクニックを学び身に付けたが、
審美的センスは簡単には身につかない。
機能はどれも同じように満たしてはいるが、
出来上がった補てつ物は個性が出てしまう。
誰が作ったかが分かるのだ。

学校の先生には日頃から一流のものを観なさいと言われた。
絵画やオブジェなどの芸術品、自然の景色、昆虫や花の造形などが参考になるのだ。
美しいだけでなく機能も兼ね備え、個性になる。

歯科医院に勤めているとき、刑事が白骨死体の歯形を持って来院した。
身元捜査のための歯型照合である。
自分で作ったものは案外わかるので、
直ぐに自作ではないことが判明して安心した記憶がある。

入れ歯やクラウン(一般に銀歯と言われるようなもの)を作るのも物づくりだろう。
完成して磨き上げたときは達成感があり気持ちいい。
コツコツとミクロの世界で神経を集中する地味な仕事であり、
患者に会うこともあまりなく、一日中、技工部屋で仕事をする。
出社のとき以外、日に当たらないことも多い。

日本の歯科技工士は世界で一番だと私は思っている。
しかし、社会的地位は世界的にはかなり低いようである。
(アメリカなどでは歯科医と同等)
歯科技工士に限らず、日本では職人の地位が低いと感じる。

今、職人の技術継承が危機を迎えている。
大手企業が高卒生の大量採用をして技術の継承を促すようである。
技術こそが日本の力だからであろう。
ITを作るのも人間である。
普通の人が出来ないことをするのがプロであり職人である。
カウンセラーという職業も職人だと私は思っている。
技術と心をもった職人を大切にしてほしいものです。


(次号に続く)

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